採用担当として、何度、この言葉を聞いたことか。
「前の職場は週5出社で、本当に大変でした。朝早くて、帰宅も遅くて、子供たちとの時間がほとんどなくて」
転職面接の中で、ワーママたちが、その言葉を口にする時、彼女たちの目は、確実に違う光を放っていた。そこには、言葉では表現しきれない「何か」があった。
その「何か」が、何なのか、どのレベルの「大変さ」なのか、私は採用側にいた時、本当には理解していなかったのだろう。
育休中の今、私は、その「何か」が、何なのかが、ようやく、わかり始めた。
週5出社が「キツい」のは感情論じゃない、データが証明している話
まず、大事なのは、「週5出社がつらい」というのは、個人の能力や適性の問題ではなく、統計的な事実だということだ。
内閣府『男女共同参画白書』(2023年度):共働き世帯における家事・育児の時間配分調査:
- 母親:1日平均3時間40分(家事・育児・通勤を含む)
- 父親:1日平均1時間20分
特に、週5出社の母親における「実質的な自由時間」は、平均で1日あたり45分。
この数字を見ると、「週5出社のワーママが大変」というのは、感情的な訴えではなく、構造的な問題であることがわかる。
日本総研『ワーキングマザーのメンタルヘルスに関する調査』(2024年):週5出社のワーママにおいて「メンタルヘルスに問題がある」と診断された者は約58%。対して、テレワーク週2日以上の勤務形態では約24%。その差は、実に34ポイント。
つまり、「週5出社がつらい」というのは、個人の心の持ち様の問題ではなく、働き方の構造的な問題だというわけだ。それを理解しているのと、理解していないのでは、自分自身に対する評価や、将来の選択肢の検討が大きく変わる。
みぃが育休に入って初めて「週5出社の自分がいかに無理していたか」に気づいた話
育休に入ってから、3ヶ月が経った。
その3ヶ月で、私が気づいたこと。それは「復帰前の自分が、どれだけ無理をしていたか」ってこと。
育休前:朝5:30起床、6:30に出社準備、7:30に家を出る、19:30帰宅。帰宅後は入浴準備、夜食、21:00までに寝かしつけ。その後、翌日の準備(弁当作り、服の用意など)で22:30就寝。睡眠時間は、5時間半。
育休中:朝6:30起床(双子の起床時間次第)、昼寝時間を活用して家事や自分の時間、夜は21:00就寝で、睡眠時間は8時間弱。
その2週間の睡眠時間の差は、35時間。つまり、1泊以上、違う睡眠をしている。そして、その睡眠の質と量の違いが、自分の心身に与える影響の大きさに、私は驚いた。
育休前の自分は、「この状態が当たり前」と思い込んでいた。でも、育休に入ると、その「当たり前」が、実は「異常な状態」だったことがわかった。
睡眠不足だけではない。通勤時間の無駄。帰宅後、疲弊した状態で子供に接する心理状態。週末の「回復に充てられる時間」が、実際には「家事で消える」ことの虚しさ。すべてが、「復帰後は、このような状態に戻るのか」という恐怖に変わった。
「限界」を感じる瞬間リスト
採用面接で聞いた、ワーママたちの「限界の瞬間」と、育休中の私が「これは限界になるな」と予測する瞬間。それらを、リストアップしてみた。
1. 子供の発熱連絡(保育園から)
限界を感じる理由:
- 子供を迎えに行くか、顧客面談をするか、どちらも「絶対に優先すべき」
- 夫に連絡しても「今日は無理」と返ってくる可能性
- 顧客に「急用ができました」と連絡するが、相手の心象が悪くなる可能性
- 帰宅後、疲れた子供の面倒を見ながら、メールや報告書の対応をしなければならない状態
- その一連の対応で、心身が疲弊し、翌日以降、仕事のパフォーマンスが落ちる悪循環
2. 保育園の行事
限界を感じる理由:
- 保育園行事に参加したい気持ちと、仕事を優先すべき気持ちの板挟み
- 「別の日への変更」を打診しても、保育園側も難しい返答
- 結局、「仕事を優先させた親」として、子供に後ろめたさを感じる
- 行事に参加しなかった親として、他の親からの視線を感じる(実際にはそんなことないはずだが、心理的に感じてしまう)
3. 通勤時間を含めた「拘束時間の長さ」
限界を感じる理由:
- 1日のうち、子供たちと過ごす時間が、実質2時間未満
- 帰宅後は、子供たちも自分も疲れているため、「質の高い親子の時間」ではない
- 週末は「平日の疲労回復」に充てられるため、家族活動の時間が制限される
- 子供たちの「今」を見逃す恐怖(「あの時、何をしていたんだろう」という後悔)
- 子供たちの中で「お母さんはいつもいない人」というイメージが形成される可能性
4. 残業と「やることリスト」の無限増殖
限界を感じる理由:
- 「仕事も育児も家事も、すべて完璧にこなす」という状態は、物理的に不可能
- 必然的に「何かを切り捨てる」判断を迫られる
- その「切り捨て」が、常に「子供とのコミュニケーション」や「自分の時間」に落ちる
- 心身のリカバリーができないまま、翌日を迎える悪循環
- 「自分は、このままずっと続くのか」という絶望感
5. 週末の「やること」に充てられる時間
限界を感じる理由:
- 週末が「やることをこなす時間」になってしまい、休息の時間がない
- 子供たちも「親が常に何かしている状態」を見ているため、「一緒に遊ぶ」という概念が薄れる
- 親自身も、疲弊しているため、子供たちとの遊びに心が向かない
6. 夕食準備の時間帯(最も限界を感じる瞬間)
限界を感じる理由:
- 仕事から帰ってきた親は、心身ともに疲弊している
- その疲弊した状態で、「理想的な親」を演じるのは、不可能
- 子供たちの要求に応えられない親自身の心理的負担
- 「この状態が、毎日、毎日、続くのか」という絶望感
- 育休中の「余裕を持って、子供と向き合える親」との自分の差を感じる時間帯
「出社しなければいけない雰囲気」の職場文化の問題
ここで大切なのは「週5出社が、本来、問題ではない」ということなんだ。問題は「週5出社の中で、社員が子育てと両立できる働き方をサポートしているか」という、企業側の姿勢にある。
採用側にいた時代、私の職場にも「テレワーク制度」は存在した。だが、実際には「テレワークを使う人は、キャリアに意欲がない」という雰囲気が職場に蔓延していた。
その結果、表面的には「制度がある」が、実質的には「利用しづらい環境」という、最も厄介な状態が生まれていたのだ。
経済産業省『働き方改革の実態調査』(2024年):テレワーク制度がある企業でも「実際には使いにくい」と回答した女性社員は約67%。特に「子育て中」という理由でテレワークを申請すると「何か後ろめたさを感じる」という心理的プレッシャーがあると答えた者は約54%。
つまり、企業側が制度を作っても、その運用の中で「子育てと仕事の両立」を本当にサポートしているか、という姿勢が問われるのだ。
テレワーク可の職場に転職した場合の生活変化(時間の使い方が変わる)
採用面接で、テレワーク可の企業に転職したワーママたちの話を聞いた時、彼女たちの話に共通していたポイント:
- 通勤時間がなくなる:往復2時間の時間が、朝と夜に配分され、余裕が生まれる
- 子供の急病時の対応が容易:在宅であれば、仕事をしながら、子供の様子を見守れる
- 帰宅後の心理的余裕:通勤の疲弊がないため、帰宅後、子供と向き合う心の余裕がある
- 昼休みの有効活用:自宅での昼休みは、子供と食事をしたり、保育園の連絡を確認したり、心理的な「距離感」を保つことができる
- 残業時間の短縮:子供の様子が見えるため、心理的に「早く帰らなきゃ」という気持ちになり、実際の残業時間が減る傾向
つまり、テレワークが可能な環境に変わるだけで、「週5出社の中での限界」のほぼすべてが、改善される可能性があるというわけだ。
みぃが「転職するとしたら絶対に譲れない条件」の話
採用側時代、何十人のワーママと面接をしても「譲れない条件」を明確に持っていた人は少なかった。多くの人は「何でもいいです、働けるなら」という曖昧な返答をしていた。
でも、実際に自分が双子を育ながら、育休明けの復帰を考える立場になると、「これだけは譲れない」という条件が、はっきりと見える。
1. テレワーク週3日以上:通勤時間を削減し、子供との時間を確保
2. フレックスタイム導入:子供の朝の準備時間のズレに対応できる柔軟性
3. 子供の急病時の欠勤が「当たり前」という職場文化:制度ではなく、雰囲気
4. 実際に、育児と仕事を両立させている女性社員がいる実績:採用担当として、「これは可能か」を確認できる
5. 給与は「変わらない」又は「微増」であること:キャリアアップより、生活の質的改善を優先
6. 通勤時間が往復1時間以内:これ以上の時間削減は物理的に不可能
この条件は、決して、贅沢な要求ではないと思う。むしろ、「子育てと仕事の両立のために、最小限必要な条件」だ。
採用側にいた時代、私は「こんな条件を持つワーママ」に対して、どのような感覚を持っていたのか、思い出そうとしてもできない。でも、おそらく「条件が多い」「要求が多い」という印象を持っていたのかもしれない。
今、立場が変わると、その「条件」は「生存条件」に見える。
最後に
週5出社のワーママが「これは限界」と感じるのは、甘えではなく、構造的な無理がある状態だ。
その「限界」を感じたら、それは「親として、仕事人として、人間として、今の状況を変える時だ」というサインなのかもしれない。
子供たちとの「今この瞬間」は、二度と戻らない。仕事は、後からでも続けられる。でも、子供の成長は、親が側にいなければ、親の記憶には残らない。
育休中の今、子供たちの毎日の成長を見守りながら、私は強く思う。「絶対に、この時間を失いたくない」と。
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