1. そもそも「年収の壁」とは?106万と130万のおさらい

「年収の壁」は、収入が一定額を超えると社会保険料の負担などが発生して手取りの増え方が変わる境目のこと。代表が106万円と130万円です。

復職を控えると、必ず一度はぶつかるのが「年収の壁」。ざっくり言うと、収入が一定ラインを超えると、社会保険料の負担などが発生して「働いた分だけ手取りが増えるわけではなくなる」境目のことです。よく話題になるのが次の2つ。

代表的な2つの「壁」

・106万円の壁:一定の条件を満たすパート・短時間労働者が、勤務先の社会保険(厚生年金・健康保険)に加入する目安。
・130万円の壁:配偶者などの扶養(被扶養者)に入れるかどうかの目安。これを超えると自分で社会保険に入る必要が出てきます。

この2つが、2025年に成立した年金制度改正などを受けて、2026年にかけて見直しの局面に入っています。「壁を気にして働く時間を抑える」という考え方そのものが変わりつつある、というのが今回の大きな流れです。順番に見ていきます。

2. 130万円の壁:「労働契約の年収見込み」で見る方式に

扶養に入れるかを「労働契約の内容で見込まれる年収」で判断する取扱いに。契約内で働いていれば、繁忙期の残業で一時的に超えても直ちに扶養を外れる扱いにはなりません。

まず130万円の壁から。これまでは「今後1年間の収入見込み」で扶養かどうかを判断していたため、繁忙期に少し稼ぎすぎると「うっかり扶養から外れる」心配がありました。ここに、労働契約の内容(基本給や諸手当など)で見込まれる年間収入が130万円未満であれば、原則として被扶養者として取り扱うという考え方が導入されています(出典:厚生労働省)。

さらに、繁忙期の残業などで一時的に130万円以上になった場合も、事業主の証明を添付することで、原則として連続2回まで扶養の継続が認められる取扱いがあります。つまり「契約どおりに働いていれば、たまたま超えた月があっても即アウトにはならない」という方向です。

⚠️ ここは制度の運用や呼び方が変わりやすい部分です。施行時期や細かな条件は断定せず、加入先の健康保険(保険者)や勤務先・公式情報で必ず確認してください(※2026年6月時点)。

「壁の範囲で働く」か「壁を越えて働く」か、迷ったら

働き方と年収の組み立ては、プロに相談しながら整理すると早いです。採用担当が目的別に比較した5社はこちら

ワーママ転職エージェントおすすめ5選を見る →

※登録・利用は無料/※広告を含みます

3. 106万円の壁:「月8.8万円」要件の撤廃で何が変わる?

社会保険に入る要件だった「月額賃金8.8万円以上」が撤廃される予定(厚労省資料では2026年10月予定)。撤廃後は「週20時間以上・学生でない」が主な加入要件になります。

次に106万円の壁。これは「一定条件を満たすと勤務先の社会保険に加入する」ラインで、条件の一つに「月額賃金8.8万円以上(年収にすると約106万円)」がありました。2025年に成立した年金制度改正で、この賃金要件が撤廃される予定です(出典:厚生労働省)。

厚生労働省の資料では、最低賃金の引き上げ状況を踏まえつつ2026年10月に撤廃する予定とされています。撤廃後は、「週の所定労働時間が20時間以上」「学生ではない」などが主な加入要件になっていく方向です。「週20時間ほど働くなら、収入額に関わらず社会保険に入る」イメージに近づきます。

あわせて押さえたい変更(予定)

企業規模の要件:現在は「従業員51人以上」などの規模要件がありますが、これも2027年10月から段階的に縮小され、2035年10月に撤廃されて企業規模を問わず加入対象になる方向です。
対象人数:賃金要件の撤廃や最低賃金の引き上げにより、新たに約200万人が被用者保険(厚生年金・健康保険)の適用対象になる見込みとされています。

採用担当として補足すると、これは「パートでセーブして働く」前提が崩れていく方向の変化です。「扶養の範囲で抑える」より「社会保険に入ってしっかり働く」ほうが選びやすくなる——そう考えると、復職のタイミングは働き方を組み直すいい機会でもあります。

4. 育休明けの働き方は、結局どう考えればいい?

「扶養内で抑える」か「社会保険に入って働く」か。正解は世帯ごとに違います。手取りだけでなく、将来の年金や手当まで含めて比べるのがコツです。

ここまでの変化を、復職する立場でかみ砕くと、考え方は大きく2つです。どちらが正解という話ではなく、世帯の状況で最適解が変わります

  • ① 扶養の範囲で、時間を抑えて働く。保険料の負担は抑えられますが、働ける時間と将来の年金は限られます。子どもが小さいうちの一時的な選択としてはアリ。
  • ② 社会保険に入って、働く時間を増やす。加入直後は手取りが一時的に下がる場面もありますが、将来の年金が増える・傷病手当金や出産手当金が使えるなどのメリットがあります。長い目で見ると差が出やすい。

「壁を越えると損」と言われがちですが、越え方によっては将来のリターンが大きいのもまた事実。大事なのは、手取りの一点だけで判断しないことです。具体的な金額は、育休給付や保育料も含めて世帯ごとに試算するのが確実。お金まわりの整理は 育休給付金をもらいながら転職活動するときのお金の計算社会保険と転職のタイミング もあわせてどうぞ。働き方の制度面は 育児・介護休業法 改正のポイント に整理しています。

5. 採用担当として:復職前にやっておきたいこと

壁の見直しは「待っていても来ない」情報。復職前に①勤務先の社会保険の扱いを確認、②働き方と年収の組み立てを試算、③選択肢として転職市場も見ておく、の3つを。

制度が動いている時期だからこそ、復職前にやっておくと安心なことを3つ。採用する側にいたからこそ「ここを確認しておくと後悔が少ない」と感じるポイントです。

  • ① 勤務先の社会保険の扱いを確認する。復職後の労働時間で社会保険に入るのか、扶養のままなのか。人事・総務に聞いておくと働き方を決めやすい。
  • ② 働き方と年収の組み立てを試算する。時短かフルか、扶養内か社保かで手取りと将来年金がどう変わるか。数字にすると迷いが減ります。
  • ③ 選択肢として、転職市場も見ておく。今の会社の条件が自分に合うかは、ほかと比べて初めて分かります。「動く」と決めなくても、相場を知るだけで復職後の交渉材料になります。

とくに③は、育休中という落ち着いて準備できる時間があるうちが動きやすいです。「壁が変わるなら、自分の働き方も組み直そう」——そのきっかけに、まず情報を集めるところから始めてみてください。